幸せな暮らしには、ライフステージに合った住居が必要です

「人生最大の買い物」と言ってもいい持ち家。住宅ローンについてはもちろん、老後まで住み続けられるか、将来売ることはできるのかなど、悩みは尽きません。

そこで、住宅について研究されている瀬古美喜先生に、持ち家の買い替えについて伺いました。ライフステージに合わせた住み替えについて考えることは、私たちの暮らしの在り方を見直すきっかけにもなるでしょう。

新築の購入と引越しを検討する前に、この記事を通して「住まい」について考えてみませんか?

瀬古 美喜(せこ・みき)

瀬古先生プロフィール写真

慶應義塾大学 名誉教授。武蔵野大学 経済学部 経済学科 教授。博士(経済学)。
慶應義塾大学 経済学部 卒業。日本大学 経済学部 教授、慶應義塾大学 経済学部教授を経て、2013年4月より慶應義塾大学 名誉教授。2014年4月より現職。
この間マサチューセッツ工科大学 経済学部 客員研究員、ウプサラ大学(スウェーデン)客員研究員、カリフォルニア大学 バークレー校客員研究員などを歴任。

日本の遡及型融資制度が、持ち家の買い替えに対するハードルに

ー日本では持ち家を買い替える世帯が少ないそうですが、それはなぜでしょうか?

日本で住宅の買い替えが積極的に行われていないのは、様々な要因が複雑に絡み合ってのことでしょう。

その一つに資金制約があります。日本の住宅ローン融資制度は「遡及型融資(リコース・ローン)」です。

たいていの世帯では、前の家を売って新しく購入しますね。そうすると、前の家のローンを返済し終え、かつ新しい家の頭金も支払わなければなりません。

では、前の家が担保割れ(※)していたらどうでしょうか。この場合、日本の遡及型融資制度では、住宅だけを差し出しただけでは解決しません。預貯金や株式などを取り崩してでも完済する必要があります。

財産が減ってしまうと、新しい家の頭金が用意できないかもしれません。買い替えに対して制約があるというのは、こういうことです。

※住宅の売却価格がローンの残高を下回ってしまう状態

ー海外であれば、持ち家の買い替えに資金制約はないのでしょうか

例えば、アメリカのほとんどの州では「非遡及型融資(ノンリコース・ローン)」制度となっています。

非遡及型融資制度の場合、担保割れしても住宅さえ差し出せばおしまいです。預貯金にまで手を付けられることはありません。ここが日本と大きく異なります。

極端な話をすると、前の家を手放しても、頭金が残っていれば新しい家を購入できるんです。よって、日本よりは簡単に持ち家を手放せるのでしょうね。

ーそう考えると、日本の遡及型融資制度はデメリットしかないように感じます

遡及型融資制度は、非遡及型融資制度よりも利率が低い点は良いかもしれませんね。非遡及型融資制度では、借り手は担保割れしても家を手放せば済むということもあり、貸す方は金利を高くしたり、住宅の価値を厳しく審査したりします。

これが遡及型融資制度であれば、住宅の状態まで審査対象になりません。

本来であれば、担保割れを防ぐためにも、建物の管理状況などをつぶさに検討する方が良いわけです。しかし、現状では借り手の勤務先や収入などが重視されていると感じます。

遡及型融資制度においては、二重ローンも悩ましい問題です。

地震や津波などによって住宅が被害を受けた場合、遡及型融資制度であれば住宅ローンは残ってしまいます。自然災害といったやむを得ない状況でも、ローンを支払い続けなければなりません。

新しい家を購入できたとしても、前の家の分と二重にローンを支払うことになってしまいます。返済が大変苦しくなりますね。

ライフステージに合わせて持ち家を買い替えるのが理想です

—頭金も買い替えのハードルになりそうですが、実際はどうなのでしょうか?

まず、頭金についてですが、「住宅価格に対して、これだけの金額を用意しなければならない」という決まりはありません。中には頭金ゼロで購入できる住宅もあるでしょう。

ただし、頭金を支払っておけば、その分だけ月々支払うローンの金額は減りますよね。毎月の生活費がローンに圧迫されないためにも、無理のない範囲で頭金を出しておくと良いように思います。

ただし、ライフスタイルや将来設計は人それぞれです。頭金をいくら支払うか、自分の収入などを考えながら判断してもらいたいですね。

今は、大企業に勤めているからといって、将来安泰とは言い切れない時代です。ローンを組む際にも、これから起こり得る変化を想像しながら、自己責任で決めていかねばならないと思います。

ー「持ち家を手放したい」と思った時、売却に適切なタイミングなどあるのでしょうか

これという明確なお答えはできません。なぜなら、先ほども申した通りライフスタイルや将来設計は人によって異なるからです。住んでいる地域、世帯人数などによっても状況は変わってくるでしょう。

20代や30代の若い世帯であれば、数十年後の将来について、なかなか想像できないかもしれません。ライフステージが変わるごとに住居も買い替えられれば理想なのでしょうね。

子育て世代は郊外の一軒家でのびのび過ごすのがいいでしょうし、子どもが巣立って高齢の夫婦だけになれば都心のマンションが便利かもしれません。私は、ライフステージが変われば住居も変わるのが自然だと思います。

遡及型融資制度の日本では、それがなかなか難しいのですけれどね。

あるいは、若い方であれば、持ち家そのものに価値を見出さないかもしれません。

昔は社宅から借家と徐々にステータスを上げていき、持ち家は一生の財産になりました。しかし、現代では「ずっと賃貸住まいでいいから、浮いた分のお金を他で使いたい」と考える人も少なくないでしょうね。

先の見えない現代だからこそ、持ち家選びは「利用する価値」を考えて

ー新しく持ち家を購入する場合は、どのような点に気を付ければいいのでしょう か?

投資目的の場合は別ですが、持ち家を購入するなら「利用する価値」を見出せるかどうかが大事だと私は思います。ステータスよりも実際に住むことを重視しましょう。

「利用する価値」が何かというのは、なかなか難しいですね。これも人によって異なりますから。総資産や支出に対する考え方だけでなく、家族構成や教育方針によっても変わってきますよね。

ライフステージによって住居を買い替えるつもりであれば、将来的に売れそうな物件を選ぶのも一つです。

例えば、崖の上にある一軒家で交通の便も悪ければ、将来的に高く売れない可能性もあります。自分たちが若い時に住む分にはいいのでしょうけれどね。

ー2020年は新型コロナウイルス感染症の拡大で、日銀は金融緩和策の維持を決定しましたが、住宅ローンのハードルが下がって契約しやすくなったと思われますか?

住宅ローンの金利も低水準のまま推移していますが、だからといってハードルが下がったと断言はできないでしょう。政府や日銀の政策を見てすぐにとびつくのは、あまり賢い選択ではないと私は考えます。

新型コロナウイルスの問題を通して皆さんも実感されていると思いますが、この状態がいつまで続くかわからないですよね。景気の見通しが立たない中で、余裕がないのに低金利だからと安易に契約するのは、危険ではないでしょうか。

そうでなくても、この数年で産業構造は大きく変化しています。一部上場企業に勤めているからといって、この先も安泰だとは言えないですよね。

住宅を単なる箱で見てしまうと、ライフスタイルの価値を見失います

ー海外で生活されたご経験もおありの先生から見て、日本は持ち家を購入して住みやすい国と言えるでしょうか?

まず申し上げたいのは、住宅を単なる箱として見てしまうと、私たちはライフスタイルの価値を見失ってしまうということです。

日本に住むか海外に住むか検討する時、気候や物価、ある種のステータスを重視する人もいるでしょう。しかし、本当に住みやすい場所は「どういった文化の中で、どういった人たちと共に暮らしていくか」を考えると見つかるかもしれませんよ。

例えば、日本であれば、文化的な背景を同じくする、価値観の非常に似た人たちに囲まれて生活できます。価値観が似たもの同士であれば、安心できることも多いですよね。

もちろん、その国の空気が自分に合っていて、暮らしていくのに十分な会話ができるのであれば、海外への移住を検討すると良いでしょう。

住宅を箱としてしか見ない場合、「広い家が持てるから」あるいは「物価が安いから」といった理由で海外へ出て行く人もいるかもしれません。しかし、それだけで移住を決めてしまうと、周りの環境や近隣との関係がうまくいかず、良い生活は叶わないかもしれませんね。

これは私の考えですが、やはり年を取るほど周りとの関係が大切になってくるのではないでしょうか。もちろん、全員がそうだとは言いませんけれどね。

住宅がうまく循環し、ライフステージに合った空間が手に入る日本に

ー先生は、これからどんな研究に力を入れていきたいとお考えですか?

これからも変わらず、住宅に関する問題に取り組んでいきたいと考えています。

例えば、アメリカでは中古住宅がうまく循環しています。ですから、ライフステージが変わるごとに、比較的持ち家を買い替えやすいのです。

イギリスですと100年住宅なんて珍しくありません。築年数に関係なく、質の良い建物はかえって高値で売れます。

日本では新築を重視する傾向にあります。持ち家にするなら新築がいいと考えている人が圧倒的で、少しの期間でも誰かが住んだ物件は価値が落ちてしまいます。

私は、日本の中古住宅市場が、新築に負けず劣らず注目される時代になってほしいと願っています。そのためにも、どうすれば中古住宅が流通するかを考えていきたいですね。

もう一つ注目しているのは住宅のミスマッチです。特に世代間のミスマッチは深刻で、高齢層は持ち家で部屋を持て余し、若年層は狭い賃貸物件での子育てを余儀なくされています。こうしたミスマッチが解消できれば、ライフステージに合った部屋数が確保できるのではないでしょうか。

空き家についても解決すべき問題が山積しています。都心と地方の空間的なミスマッチですね。

例えば、地方を離れ都心で暮らす子ども世帯の悩みがあります。親が遺した中古物件が売れずに悩む一方、都心では狭い住居空間を強いられています。

空き家問題は、一つを解決すれば済むわけではありません。制度設計から根本的に見直す必要があるでしょう。

日本でも、住宅がうまく循環し、各世帯に合った空間が確保できるようになってほしいですね。私の研究が、そうした幸せな暮らしの一助になってくれればと思っています。

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